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36協定は非人道的か?36歳の誕生日に考えてみた

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出典:首相官邸ウェブサイト

私事で恐縮だが11月15日は私の誕生日であり、2016年11月15日12時15分から36歳となった。改めて、私を産み育ててくれた両親に感謝の気持ちが溢れてくる。なお今年36歳といえば、プロ野球の松坂世代である。多くの選手が晩年を迎えているが、まだまだ頑張って欲しい。

さて、36という数字を見ると「36協定」を真っ先に思い出すのは元会社員のサガだろう。36協定といえば電通の過労自殺問題の議論の中で、田村憲久・前厚生労働相が

「よくよく考えると非人道的だ」

と発言したことが話題になった(読売新聞プレミアム:有料より引用)。

会社員時代に、実際に36協定によって月100時間超の残業を経験した私は「よくよく考えずに発言したんだろうな」と感じた。36協定は人によっては「人道的」だからだ。


36協定とは?

36協定とは労働基準法第36条に規定されている時間外労働の労使協定である。36協定では「特別条項」を結べば、時間外労働の限度時間を延長できる。そして、この延長時間に上限はない。

よって、労働者と使用者が合意すれば、無制限の時間外労働が合法的に可能になっている。そのため、厚労省が定める過労死ラインである月80時間超の残業が後を絶たず、過労死・過労自殺の原因だと批判する意見は多い。アゴラでも駒崎さんが廃止を訴える記事を投稿している。

政府の働き方改革実現会議でも議題に挙がっており、今後は見直しの議論が加速するだろう。

私は36協定の廃止は、「条件付き賛成」だ。過労死するまで働く人が続出するという日本の現状は異常だと思うが、その原因は36協定では無い。現状で36協定を廃止すると、「36協定に守られている人達」をより追い詰め、過労死・過労自殺はますます増えると思うからだ。

36協定に守られている人達

36協定の見直しの議論は、政治家や弁護士・社労士といった人たちからは出て来るものの、「当事者である労働者、労働組合」からの意見がほとんど無いことに気づく。それもそのはず、そもそも36協定は「労働者と使用者の合意」がなければ成立しない。例え月100時間超の過労死ライン越えの長時間残業であっても、それは労働者が自ら望んだものなのだ。36協定を自ら望んだ労働者は「廃止?余計なことを言うな、放っておいてくれ」と思っているだろう。

では、なぜ労働者は過労死越えの長時間残業を自ら望むのか?それを考えるために、会社が長時間残業を禁止したと想定する。

・長時間残業が禁止になったら、人数を増やすか、売り上げを減らすか、どちらかが必要。

・現状、解雇の難しい日本では人を増やせない。人数を増やせなければ、売り上げを減らすしかない。

・定年まで雇ってもらう予定で入社した正社員は、会社の売り上げが下がり、倒産する可能性が高まるのは困る。

・では、解雇を容易にして人を増やすことが容易になると、定年まで雇ってもらう予定の自分が解雇されるかもしれないので困る。

・とにかく自分が定年まで雇ってもらうのが一番大切なので、それを回避できるなら長時間残業は構わない。会社が禁止するなら、サービス残業してでも仕事をする。

となる。

現状で36協定を廃止すれば、ただただサービス残業が増えるだけで残業時間が減らないが、残業代が減り生活が苦しくなるため、過労死・過労自殺する人は増加するだろう。現に、電通は「36協定の特別条項(70時間)を超えて、100時間超までサービス残業」していた社員がたくさんいたことがわかった。もし36協定が無かったとしても、電通社員は残業しまくっていただろう。

よくよく考えると、36協定は「終身雇用を願う正社員」にとっては「人道的な」制度である。

36協定で苦しむ人達を救うために「解雇ルールの明確化」を!

もちろん、36協定は「終身雇用を願う正社員、ではない人達」にとっては非人道的な制度だ。
「労働者と使用者の合意」といっても合意に全く関わることのできない若手社員、終身雇用が保証されない中小企業の正社員・非正規労働者、これから就職する若者、これらの人にとっては望まない長時間労働を強いられるだけの、理不尽なものだ。

私は特にこれからの日本を引っ張っていく若者を救うためにも、36協定を改正し、残業時間を規制するべきだと思っている。そして、そのためにはまず最初に「解雇ルールの明確化」が必須だ。

この意見は、人事コンサルタントの城繁幸さんの受け売りだが、改めて私からも主張したい。なお、この意見を出すと「解雇ルールを明確にすると、若者が真っ先に解雇される。長時間残業の規制が先だ」と反論を受ける。

これは逆だ。

現状の解雇ルールで残業時間を規制したら真っ先に被害を受けるのは、「これから就職しようとする若者」だ。企業はパート・派遣の採用を増やし、若者は正社員に採用されなくなる。どんなに外野が企業を批判しても、「若者を採用しない」ことを止める手段は無い。「不当解雇」は労使協議や裁判に訴える手段もあるが、「不当不採用」は協議できるはずもないし、裁判でも絶対に勝てない。

また、現状でも中小企業では普通に若者が解雇されている。「解雇ルールの明確化」は規制緩和ではなく、中小企業への「規制強化」だ。

まず「解雇ルールの明確化」を行い、若者の正社員採用と、不当解雇への救済を後押しするべきだ。なお、解雇ルールが明確になり雇用が流動化すれば、「自分の望まない長時間残業を強いる企業」からは社員がどんどん辞めていくので、そのときには36協定の改定はどうでも良くなっているだろう。

実際、私は今年の春に36協定で80時間超の長時間残業を強いる企業から逃げ出し、現在は快適な労働環境である。会社は36協定で長時間残業を強制できても、あなたが逃げるのを止めることは絶対にできないのだ。


※この記事は、2016年11月16日にアゴラに投稿・掲載された記事を再掲したものになります。

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author : 宮寺達也

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